九州大学アジア人財プログラム

 修了生インタビュー ~「MY ADVANCE[九州大学留学生就職最前線2011リーフレット]」より抜粋~

 ハイレベルな研究と就職サポート。九州大学では多くのことを学びました。

 

李 相根さん[韓国出身]
工学府機械科学専攻
2010年度博士課程後期修了

勤務先:トヨタ自動車株式会社

 九州大学のことを知ったのは、韓国の大学で3年次に進んだ頃でした。当時、進学か就職かを決めかねていた私は、燃料電池に興味があったため、まずそれに関する情報を集めてみることにしました。調べるうちに、九州大学が最も活発に研究を進めていることが分かり、九州大学(以下、九大)の大学院への進学を決めました。
 大学院では、念願だった「燃料電池の高性能化」の研究に取り組むことができ、現在勤めているトヨタ自動車(以下、トヨタ)でも、燃料電池車を開発する部署で九大時代に学んだことを活かしながら、働いています。
企業を選ぶうえで、私は2つのポイントを重視しました。1つは、九大で学んだ知識が活かせること。もう一つは、自らモノづくりに携われること、です。結果として、第一志望はトヨタ自動車でした。私自身車が好きでしたし、なにより、世界委誇れる高度な技術力を持つ企業であることが魅力でした。
  私のような留学生が就職戦線を勝ちぬくうえで必要なのは、日本語でのコミュニケーション能力です。日常会話、メールのやりとり、さまざまな文書の作成、そのすべてにおいて、日本の学生と同水準が求められます。そこで私は、大学ではできるだけ日本語を使うよう心がけ、学内行事にも進んで参加しました。加えて、就職支援プログラムも受講。日本の産業界やビジネスマナーについて、しっかり学びました。
 入社して実感するのは、「堅い企業」と思っていたトヨタが実際はとてもフランクな社風を持つ会社であること。また、仕事の現場ではムダが厳しく省かれ、効率を極限まで高めている。これも驚きでした。こうした“想定外の素晴らしい点”も含めて、私の就職活動は大成功だったと思います。成功のポイントは「確かな準備」です。早い段階で将来を見据え、そのために何をすべきかを考えて、実行する。これが、未来に繋がる道だと思います。


 大学院で就職サポートを受けたことが、私の進路の決め手になりました。

 

陳 晶さん[中国出身]
総合理工学府環境エネルギー工学専攻
2009年度修士課程修了

勤務先:TOTO株式会社

 私の場合は、最初からTOTOに入社したいという強い気持ちがありました。というのも中国でビザを取得するとき、日本領事館で初めてウォシュレットを見て、驚かされたことと、日本の大学に入学してトイレを見たら、全て便器がTOTOの製品で、この会社はすごいなあと感じたからです。
 ですから九州大学の大学院に進んで、就職のサポートを受けたことは、恵まれていたと思います。インターンシップもTOTOで受けることができることになり、すごいチャンスをもらえました。また、大変役に立ったのが産業工学コースのプログラムです。日本企業史の発展や理念など、興味深い話をたくさん聴くことができました。
 内定を取るために頑張ったことは、とにかくTOTOに入社したいということをアピールしたことです。会社向けのインターンシップ報告会のチャンスを狙って、インターンシップで学んだことを精一杯やりました。これはとても大きなチャンスだったと思います。
 今は実習中ですが、正直に言うとちょっときついです。しかし、今までの学生生活の中で、なかなか接触できない日本社会のもう一面が体験できていることが、私にとって、とても大きな財産になると思います。また、現場の人たちがとても陽気なので助けられています。
 実習で経験した製造知識を生かし、今後はずっと憧れていた節水便器の開発業務に携わる予定となっています。企業で働くうえで考えることは、謙虚に学ぶ姿勢が大事だということです。頼まれたことをしっかりとやることで、信頼される人間になりたいと思います。
 TOTOは海外にも拠点を持っていますが、留学生を採用するのは、現地の人より日本人のことをわかっているからではないでしょうか。同時に現地のことも理解できる。そんな架け橋のような役割が求められているのだと思います。


 多彩な講義で視野が広がりました。今は新たな分野の研究に挑戦しています。

 

金 利映さん[韓国出身]
工学府航空宇宙工学専攻
2009年度博士後期課程修了

勤務先:三菱電機株式会社
先端技術総合研究所

 九州大学では人工衛星のプロジェクトに参加し、学部から通産で約8年間を福岡で過ごしました。先生や友達との良い関係は今も続いていて、去年は3回も会いに帰ったくらいです。毎日研究室で一緒にいるうちに、国の違いを超えて共通の話題が持てるようになりました。
 現在は大学での研究と分野が違う放電加工機の研究をしていますが、求められることに違いはありません。それは、現象を捉えて自ら考え、最善の解決策を見つけること。基礎学問とともに大学で身につけられたスキルの一つです。
 そもそも、専門分野以外に視野が広がったのも、産業工学コースの講義で企業が実際に取り組んでいる最先端の技術開発やプロジェクトなどを知ることができたからでした。メディアからだけでは見えてこないそれらの情報をえられなければ、今の進路はなかったかもしれません。
 また、実際の就職活動においても、日本語から礼儀を含む面接の練習まで九州大学に設けられている講義は役に立つものばかり。サポート体制が充実していて、とても心強く感じられました。
 そうした中で今の会社と出会い、きめ細やかなフォローをしてくださるリクルーターの方と就職に関する相談について電話やメールでのやり取りを重ね、試験を受けて採用に。将来を見据え地道に研究を重ねていく日本企業に魅力を感じ、その中でもぜひ三菱電機に、と考えた私の夢が叶いました。
 入社した今は、国籍も性別も関係ありません。ここにあるのは、「より良いものをつくる」という社員共通の永遠のテーマだけ。「フルパワーを発揮してほしい」と言ってくださる会社の期待に応えるために、日々努力を重ねています。
 諦めなければ、妥協しなければ、その努力は必ず先で実ります。後輩の皆さんも、ぜひ夢を実現してください。


 魅力ある日本のモノづくりにふれ、 一生をかける仕事が見つけられました。

 

趙 成弼さん[中国出身]
工学府知能機械システム工学専攻
2009年度修士課程修了

勤務先:株式会社安川電機

 日本に来て一年半は、まず日本語を勉強しながら自分に合う大学を探しました。その中で九州大学の恩師と知り合うことができ、以前から興味があった自動制御の研究室へ入ることに決めました。大学で私が取り組んだのは、柔軟体シミュレーション。ケーブルの物理特性をコンピュータ上に再現し、ハプティックデバイス(力覚装置)とモニターを通して、コンピュータ内に作られた仮想の物体を確認するという研究です。
 また、大学院では、研究以外でも得られるものが多く、留学生を対象とした企業見学では、それまでふれていなかった世界を幅広く知ることができ、専門以外の知識も増えました。「好きなことについて学びたい」という一念で日本に来た私が、日本のモノづくりに魅力を感じ、日本企業への就職を目指すようになったのは、そうした経験のおかげです。また、日本語の講義も力になりました。週3回の講義は大変でしたが、懸命に学んだからこそ、就職活動ではエントリーシートに自分の想いを日本語でしっかりと書くことができたのだと思います。
 そして今、国籍を問わずグローバルな人材を求め、優れた制御技術を誇る安川電機の一員として、充実した日々を送っています。現在はロボット工場に配属となり、現場実習中ですが、それも勉強のひとつ。将来、研究開発や設計に携わるようになったときに、この経験がきっと役立つことでしょう。一日も早く、会社の理念に沿って利益をもたらす社員になり、先々は、日本の先進技術を母国に合った製品づくりに活かしたい。そして両国に貢献したいと思っています。
 九州大学は、日本という国が、自分が頑張れば頑張るほど報われる国だと信じさせてくれました。その想いは就職した今も変わりません。これからがますます楽しみです。


 大学時代に養った「考える力」が、 いまの仕事に役立っています。

 

金 暁進さん[韓国出身]
総合理工学府量子プロセス理工学専攻
2010年度修士課程修了

勤務先:旭化成
イーマテリアルズ株式会社

 九州大学ではディスプレイ業界で働きたいと考えていて、液晶材料の研究をしていました。1年生のときはまだ進路に迷っていましたが、日本の会社で働きたいと思うようになったのは、インターンシップを経験してからです。九州大学で学んでいたことと、今の会社での仕事は、直接、関係はありませんが、同じ化学業界ということで、大学時代に養った考える力がすごく役に立っていると思います。
 勉強が目的で来ていたので、研究などがうまくいかないと、悩んでしまうこともありましたが、学会などにも参加することができたので、充実した学生生活を送ることができました。
 就職は旭化成が第一志望でしたが、それは1年の冬にあった会社説明会で一番印象に残った企業だったからです。外国人に強くアプローチしているし、グローバルな人材を求めていることにも好感が持てました。ですから、最初から目標を定めて就職活動を頑張ることができました。そういう経緯もあって、内定をもらったときは本当に嬉しかったです。
 旭化成に入る前と後の印象ですが、外国人である私が本当に溶け込めるかという心配がありましたが、そんな考えをしていた自分が“何だったんだろう”と思うくらい、皆さん、素の私を受け入れてくれています。外国人だからという特別な目で見られることも全くありません。
 これからは、この会社の中で、自分の名前が残るような活躍を目指し、楽しく笑顔で働きたいと思っています。時には、自分がこの仕事に向いているのかどうか、考えることがあるかもしれませんが、そんな悩みも幸せの一部なのではないでしょうか。会社での研究はもちろんですが、今後、人との関わりを大事にして成長していきたいと思います。


 世界に誇れる技術を持つ、 魅力的な企業と出会えました。

 

劉 暁霞さん[中国出身]
工学府化学システム専攻
2009年度修士課程修了

勤務先:本多機工株式会社

 在学中は、インフルエンザウィルスを検出するための、分析機器の開発を研究していました。これは他の会社でも同じだと思いますが、大学での研究と、同じ分野の就職ができることは、それほどありません。ただ、私の場合は、九大で学んだ理系の知識や、研究方法などが、いまの仕事に生かされています。責任感と緊張をともないますが、大きなやりがいを感じています。また、外国人社員が多く活躍していることも、志望動機につながりました。
 日本の企業への就職を考えた、いちばんの理由は日本が好きだからでう。日本は中国ほど大きくないし、人口も中国の10分の1しかありません。けれども、世界一流の技術が生まれ、海外とのビジネスもさかんです。外国人が多く企業のグローバル化がすすんでいるところにも魅力を感じます。
 本多機工は決して大企業ではないけれども、世界中のポンプを納入しているメーカーで、外国人が多く活躍している企業です。大学で、福岡周辺のグローバルに展開する中小企業とも出会うチャンスをもらったことは、すごくありがたいことでした。
 内定をとるために努力したことは、なんといっても企業の研究と、情報収集です。自分にあった、自分のやりたい仕事を決めて、なるべくたくさんの企業情報を収集したほうがいいと思います。それから、日本語はもちろんですが、日本の文化を理解することも大切です。実際、仕事をするようになってからも実感しましたが、日本のビジネスではチームワークの精神が大事にされます。ですから在学中にグループワークの学習を経験していたことは、すごくいいことでした。
 入社して驚いたのは、社長が毎日、社員一人ひとりに話しかけてくれることです。これは大手の企業にはない魅力の一つで、社員の元気の素です。