「留学のススメ」座談会

学生

地球環境工学科

交換留学
シドニー大学

学生

エネルギー科学科

ELEP

学生

機械航空工学科

ELEP

学生

機械航空工学科

国際コース

学生

建築学科

交換留学
シェフィールド大学

学生

電気情報工学科

Q2PEC&ELEP

学生

物質科学工学科

ELEP

聞き手
久枝 良雄 工学部長
久枝工学部長

私が九州大学を
選んだ理由

久枝:今回は各学科で留学経験がある皆さん、これから留学する方、そして九州大学に留学中の方に集まっていただきました。九州大学工学部ではさまざまな留学プログラムを用意していますが、これから九州大学工学部を目指す高校生の皆さんに、入学後ぜひ留学を経験していただく指針になればと考えております。まずは、自己紹介を含めて九州大学工学部を選んだ理由を教えてください。

江野:機械航空工学科4年の江野です。もともとロケットに興味があって、航空関係を学べて、地元の熊本から一番近い大学が九州大学でした。私の学年の機械航空工学科には女子も多くて、来て良かったなと思っています。

田村:エネルギー科学科2年の田村です。筑紫キャンパスのプログラムで研究室の1日体験をしたことが志望のきっかけです。その時に教えていただいたプラズマに興味を持ってエネルギー科学科を志望しました。僕のクラスだけ女子がいないのが寂しいですが(笑)、友達の仲も良くて、すごくいい環境で勉強ができています。

出口:地球環境工学科3年の出口といいます。僕はオープンキャンパスがきっかけでした。2つの研究室で先生にインフラの重要性について話をしていただいて、縁の下の力持ち的な仕事がしたいなと思って、この学科を選びました。

青木:物質科学工学科3年の青木です。高校の先生が九州大学理学部物理学科のご出身で、その先生からお話を聞くうちに私も九州大学に行きたいと思うようになりました。出身が福岡で実家から通えるというのもあります。初めて化学を習った時に元素が好きになって、理学部とどっちにするか迷ったのですが、基礎研究よりもモノづくりがいいなと思って工学部を選択しました。工学部の中では一番女子が多い学科なので、毎日楽しく過ごしています。

吉野:電気情報工学科4年の吉野と申します。正直にいうと、実家から一番近い国公立だったからです。中学の情報の授業でやったプログラミングが楽しかったという記憶があって、何となく直感で電気情報を選びました。今考えると、いい選択だったなと思います。

張 :建築学科4年の張です。大阪出身で中学・高校の6年間を中国で過ごして工学部に来ました。もともと設計やデザインを勉強したかったのですが、日本の車やファッション、建築がかっこいいなと感じていて、日本の設計に対するイメージがすごく高かったというのが理由です。設計にかかわる仕事がしたくて建築学科を選びました。実際に入ってみると設計よりエンジニアリングの方が濃くて、建築を全般的に勉強できる環境だなと実感しています。

アッシャ:機械航空工学科国際コースのアッシャといいます。インドから留学しています。子どもの頃、東京に住んでいたので、もう一度日本に戻りたいとずっと思っていました。インドに帰国してロボットに興味を持つようになり、日本でロボットの勉強をしたいという気持ちもありました。でも日本の大学で英語で授業をやるコースが少なくて、九州大学工学部を選びました。インドの国立大学より入りやすいというのもありましたけど(笑)。景色もいいし、すごくいい大学だと思います。

留学を決めた
きっかけ

クィーンズランド大学にて
クィーンズランド大学にて(Q2PEC)

久枝:留学でも短期、長期という違いがあるので、まずは短期留学された方に決断したきっかけをお話いただければと思います。

江野:工学部の授業で留学のパンフレットが配られますが、1年生の頃はまだ大学生活にも慣れていないので留学まで考えが及びませんでした。でも、友人が1年生、2年生の時からELEP(※1)に参加していて「すごくいい留学体験だった」と話してくれました。もともと興味はあったし、4年生になると研究も始まるので最後のチャンスだと思って3年生で参加しました。

※1: Engineering Leaders English Program。九州大学工学系部局が九州大学カリフォルニアオフィス,Inc.の協力の下で開始した短期留学プログラム

田村:高校の時から「何か自分にしか作れない新しいものを作れたらいいな」という気持ちがありました。高3の夏に物理の先生から「こういうプログラムが九大工学部にあるよ」と教えてもらって「気軽に行けるよ」という先輩の話も聞くことができたんです。それがELEPでした。新しいものを作る仕組みとかが学べたらいいなと思って「もし九州大学に受かったら1年生の時から留学に行く」と母親に宣言して、実際に行かせてもらいました。

青木:もともと海外に興味はあったのですが、ELEPに参加するまで「アメリカって本当にあるのかな」とずっと思っていて、自分で行って確かめようと思いました。授業中に先生方から「これからの時代は英語を使えないとダメ」「留学体験の有無がいろいろな面でかかわってくる」と聞いて、1年生の頃から行きたいなと考えていました。どうせ行くならアメリカで自分がやりたいことにお金を使いたいと思って、1年はお金を貯めることに専念して2年生で行ける準備をしました。

久枝:私も授業でさんざん「留学に行った方がいい」と勧めているのですが、工学部にはELEPやQ2PEC(※2)といったしっかりした留学サポートがあるので、参加しないと損だと思います。次に話していただく吉野さんは両方体験しているんですよね。

※2: Qshu-Queensland Program for English Communication。「英語によるコミュニケーション能力の向上」と「異文化交流」に焦点を当てたプログラムで留学先はオーストラリアのクイーンズランド。

吉野:はい。まずQ2PECに参加したのですが、もともと親に「一度くらい海外に行っておけ」と言われていました。正直、私自身は海外にまったく興味がなかったのですが、前の年に後輩がQ2PECに参加して「ものすごく楽しかった」と言っていたのを聞いて、3年生になって行くなら最後のチャンスだなと思って参加しました。参加してみると、実際にすごく楽しくて、帰国してすぐ「もっと(海外に)行きたい」と思うようになりました。その頃ELEPに参加した先輩から「将来のビジョンを決めるのにすごく役に立った」と聞かされて、何かをつかめるんじゃないかと思ってELEPへの参加を決めました。

久枝:次に長期留学をされた方にお話ししていただきます。

張 :大学に入って「かっこいい海外の建築を実際に見れたらいいな」という思いが強くなって、留学を真剣に考えるようになりました。留学経験のある先輩からも「チャレンジしたらどうだ」という話を聞いて、イギリスのシェフィールド大学に行くことを決めました。決めたのは2年生の後期です。

出口:私は今年の7月から交換留学でシドニー大学に行きます。サークルの先輩から「留学に行くなら大学の時しかないぞ」と言われて行くことを決めました。決断したのは1年生の頃です。10歳から英会話をやっていたので英語を使うのは日常の一部になっていたので、せっかくチャンスがあるならやってみるに越したことはないと思って決めました。

久枝:では、アッシャさんにもお話をお願いします。

アッシャ:日本語にあまり自信がないので英語で授業を行うコースを探していましたが、父がいくつか見つけてくれました。高校1年生の時に日本に来て、いろいろな大学を見学しました。早稲田大学、東北大学、慶応大学、京都大学を見学しましたが、九州が一番住みやすいと思って九州大学に決めました。

久枝:九州大学を選んでくれてうれしいですね。ありがとうございます。

留学のための
準備

LinkedIn本社にて(ELEP)
LinkedIn本社にて(ELEP)

久枝:次に留学先を決めた理由や留学の準備についてお聞きします。費用の面やビザの取得など、いろいろな準備があったと思います。

江野:親に話す前に自分で決めて事後報告したので、費用は自分でアルバイトをして工面しました。1年生の頃からアルバイトして結構貯まりましたし、自分で行くと決めた以上は自分の問題だと思っていました。

田村:シリコンバレーに行くと決めたのは、新しいものがどんどん生まれている場所だったからです。高3の夏に行くことを決めたのですが、その時におじいちゃんが留学の費用を出してやると言ってくれたんです。でも、そのおじいちゃんが高3の冬に亡くなって、代わりに叔母さんが出してくれるということになって学ばせてもらいました。本当に感謝しています。学費以外のお金は自分で出しましたが、工学部の支援があったから行けたと思います。

出口:私の高校は、スペイン出身の司教さんが創立した私立のクリスチャン系の学校でした。その司教さんが世界中で学校を創立されたこともあって、姉妹校がたくさんあったんです。その中のシドニーの学校に姉妹校訪問に行った時に、ハーバーブリッジという大きなアーチ橋を見て「こういうものを作りたい」と思ったんです。それが工学部に入ったきっかけの1つでもあるのですが、こうして実際に土木の勉強をする立場になって、もう一度行ってみたいと思ってシドニー大学に決めました。留学生向けのコースがかなりオープンで制限がなかったのも理由の1つです。

久枝:交換留学で行くとなると英語力のレベルも問われることになりますが、その点はどうでしたか。

出口:簡単ではなかったですが、ずっと英会話をやっていたのはアドバンテージになったと思います。大学に入ってからスキルアップセミナーやTOEFL対策講座に1度だけ参加したのも大きかったですね。あと、費用は短期留学に比べてかなりかかるのですが、奨学金のサポートを受けることで何とかなるかなと思っています。私はシドニーを選びましたが奨学金の種類はアメリカの方が多いので、参考までに覚えておくといいと思います。

青木:先ほども話しましたが、あまり親に負担をかけたくなくて費用はアルバイトで貯めました。行ったのはシリコンバレーですが、語学がメインではなくてイノベーションを学べることに魅力を感じたからです。5週間という長めの期間も良かったですね。サポートも手厚いのでELEPを選びました。

吉野:費用はすべて親に出してもらいましたが、奨学金も大きかったので何とか説得できました。ELEPもQ2PECも、すでに経験された人に向こうでの生活についていろいろとヒヤリングをしました。英語の授業もしばらく離れていたので、個人的にリスニングを鍛えたりしました。両方を体験した立場で言わせていただくと、もとから海外に興味がある人や英語にある程度自信がある人はELEPに行った方がいいと思いますが、漠然と1度海外を体験したいという人はQ2PECに行った方がいいと思います。

張 :シェフィールド大学は協定校の一覧から選びました。調べてみると学生の満足度がすべてNo.1だったのですごいなと思って(笑)。昨年の9月から今年の3月まで留学していましたが、イギリスは6か月以内とそれ以上でビザも違うので、どんな書類が必要かをしっかりと調べて、時間に余裕を持って申請しました。費用はトビタテ(※3)に2度応募して2度目に通ったので、それと自分のアルバイトで貯めたお金と親の援助でまかないました。留学を経験して、ランドスケープに興味が偏りました。今は、建築士ではなく造園家などにも興味を持つようになって、そちらの方面の勉強がしたいと思うようになりました。

アッシャ:まず日本語を勉強しなければと思って、高校卒業の後、5か月の休みの期間に勉強しました。一人暮らしするのは初めてだったので、掃除の仕方や料理を母親に習いました。

※3: 官民協働海外留学支援制度〜トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム。文部科学省が2013年から始めたキャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」の取り組みの1つ

先輩たちの
「留学のススメ」

▲Google本社にて(ELEP)
▲Google本社にて(ELEP)

久枝:それでは、まだ留学に行ったことがない人や、九州大学に入って留学しようと思っている高校生のみなさんに、皆さんからメッセージをお願いします。

江野:ELEPは工学部からの支援もあるし、工学部生のためのプログラムなので英語学習だけでなく、工学に関する自分がまだ知らないこととか、新しい発見がたくさんできます。留学したいと考えている人には、ぜひELEPをオススメしたいです。

田村:留学に行くことによって自分のスタンスや将来性がはっきりすると思います。シリコンバレーに行ったからといって自分ひとりがアメリカ人に囲まれるわけではなく、一緒に行く日本の学生もいます。ホームステイ先のご家族も含めて、その集団の中で自分がどういう位置づけにいるのかを確認し、日本に帰ってきてからも自分がどういう分野でどういう活躍をしていきたいかを考えて行動に移す力がつくと思います。

出口:私はこれから行くのですが、長期留学は結構度胸がいると思います。来年、帰国して留年することになりますし、その分親にも負担をかけることになりますが、それだけの価値は十分にあると信じています。決して無駄な1年にはならないはずです。働き出すと長期で海外に行く機会もないと思うので、少しでも行きたいと思ったら、短期・長期にかかわらず行ってみることだと思います。長期留学は協定校と直接やり取りもしなければなりません。ビザや保険のやり取りも自分でやることになりますが、そういう面も自分を成長させてくれる機会だと思います。

青木:私は工学部の学生は全員留学するべきだと思います。工学を学ぶ人にとってはシリコンバレーは最先端の場所ですし、他の国から来た工学部の学生も本当に優秀な人ばかりです。本当に人生を賭けて勉強しているという感じで、与えられた課題をこなしているだけの自分が恥ずかしくなりました。海外に行ったことでそういう意識を持てただけでも本当に価値があると思います。

吉野:2つの留学プログラムを通して、本当に九州大学に来て良かったと感じています。クイーンズランド大学とサンノゼ州立大学に行きましたが、他の大学から来た留学生の話を聞いていると、九州大学のサポートがいかに手厚いかがわかりました。向こうの人は語学学校だけ行って午後は自由行動なのですが、Q2PECは英語の授業を組んでくれたり、留学先の優秀な学生と個人的に話ができる機会も作ってくれます。とにかく留学すれば考え方が変わります。今は海外に興味がなくても、一度説明会で話を聞いてみてほしいです。

張 :長期留学に行く人は、向こうでの目的がはっきりしていると思いますが、それに向けての準備が一番大事だと思います。建築や設計についても、日本でのスキルと向こうで必要なスキルは全然違ったりします。語学だけではなく、そういうものを事前にしっかりと調べて準備しておけば、現地での学びはより大きなものになります。あとは、多くの人としゃべること。行った国の人だけではなく、他の留学生ともコミュニケーションを取って自分自身の世界を広げてほしいです。僕も他の国の友達がたくさんできました。

アッシャ:私は2年間九州に住んでいますが、本当に多くの方が手伝ってくれます。九州大学のスタッフもたくさんサポートしてくれて、とてもありがたいです。これだけのサポートがなければ、こんなに成長はできなかったと思います。本当にありがとうございます。

久枝:皆さんありがとうございます。留学は、本当に自分の人生が変わるくらいの大きな体験だと思います。私自身は30歳を過ぎてアメリカに客員教授として行った経験がありますが、もしも20代前半で行っていたら人生が変わっていたと思います。九州大学には留学のチャンスがたくさんあります。ぜひ、一人でも多くの工学部生が留学を決意してくれることを願っております。