新材料・新現象を社会で実現化する力
現在、さまざまな材料の開発や新現象の解明が進められていますが、社会で活用されるためには、乗り越えるべき高い壁が立ちはだかります。化学工学は、基礎研究を実現化するための架け橋となる学問です。近年では、生命、ナノ材料、環境、エネルギー、宇宙技術などの幅広い分野の発展に不可欠な学問となっています。
生命分野では、新規遺伝子導入技術、遺伝子組換え鳥類によるバイオ医薬品生産、副作用のない癌治療技術、臨床用バイオ人工肝臓、機能性生体材料による臓器再生技術などを開発しています。これらは日々の暮らしから高度先進医療分野で活用されます。
環境・エネルギー分野では、燃料電池、蓄電池、熱利用技術、排ガス処理、化学プラントを対象に、新規合成・分離技術を生み出し、また複雑な現象をシミュレーションにより明らかにし、高性能化に活かすことができます。
ナノ材料分野では、有機から無機にわたる幅広い物質系で進めており、ナノメートルのサイズ、形状を制御した材料の開発、それに由来して現れる、新しい物性、現象を検討しています。こうした材料は、バイオからエネルギーに至る産業分野で活用されます。
このように高い専門能力に加え、世界的な視野で合理的に評価、設計する基礎を築くことができます。
2024年
工学府化学工学専攻 修士2年
十河 優太 さん
柳学園蒼開高校(兵庫県)出身
Q1 あなたが九州大学工学部および在籍している学科を選んだ理由を教えてください。
オープンキャンパスでキャンパスの広大さや設備が充実していること、学生が研究を楽しんでいる姿を目の当たりにして、自分もこのような環境で学びたいと感じたため。また、九州大学の工学部は長い歴史と高い研究力を有していると聞いていたことも、選んだ理由の一つである。物質科学工学科を選んだ理由としては、幼少期から工作が好きであり、高校時代には理科、特に化学への興味が強くあったため、将来は化学の知識を生かしたモノづくりに携わりたいと考えていたため。
Q2 あなたが在籍している学科について、どのような点に魅力を感じていますか?
物質科学工学科では、入学後に化学工学、材料工学、応用化学の中から自身の興味に合わせて専攻を選べる点が良かった。私の専攻である化学工学では化学のみならず、物理、数学、生物分野の講義も多く、幅広い知識を身に着けられる点が良いと感じている。化学工学専攻は研究室の分野も幅広く学生の人数も大規模ではないため、自身の興味にあった研究室で世界の最先端で活躍される先生方から、丁寧な指導が受けられる点が良い。
Q3 あなたが所属する研究室で行っている研究内容について高校生にわかるように教えてください。
研究室(教授)名: 渡辺研究室
研究内容:私は熱プラズマについて研究しています。プラズマとは固体液体気体の次の第四の状態であり、特に私が扱っている熱プラズマは1万℃を超えるような超高温の流体で高い化学活性を有しています。そのためプラズマを当てることによる電池材料や触媒等のナノ粒子合成や排ガスや農薬等の難分解性廃棄物の処理など広い分野への応用が可能です。従来の熱プラズマ発生手法は二本の電極間での雷のような直流アーク放電が主でしたが、発生するプラズマの高温域が直径数センチ程度の棒状であり、大面積を高効率かつ均一に処理することが困難という課題がありました。そこで私は複数の電極と交流電源等を用いた全く新しい放電手法により、平板型の広範囲にわたるプラズマの発生を目指しています。また、温度や速度が均一な材料処理には広範囲にわたって均一な挙動のアークを発生させる必要があります。そのために放電挙動を従来の高速度カメラによる定性評価に加え、アークの長さや太さを反映する電圧値を用いた定量評価法を独自で開発し、材料処理に適した放電条件の模索を行っています。
Q4 将来の夢を教えてください。
大学での講義や研究活動を通して身に着けた知識や考え方、社会に貢献できるプラント技術者になりたい。化学製品の製造工場や廃棄物処理施設などのプラント設計では、化学工学の強みである基礎現象と応用技術の懸け橋となるための考え方を十分に生かせると考えている。それらを生かして世の中の人々の生活を支えたり、環境問題の解決に貢献できるようなエンジニアになりたい。