お知らせ

九州大学工学部新入生の皆さんへ

2020/04/16

令和2年度新入生歓迎 学部長講話

「Endeavour:未来への挑戦」

 

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。最新の設備と建物が整った九州大学工学部へようこそ。

今年は新型コロナウィルス感染拡大防止のため、残念ながら入学式が中止になりました。例年、入学式の際に工学部長講話を行って来ましたが、今年はできませんので、ホームページで皆さんにお話したいと思います。

2019年の終りから2020年は人類全体にパンデミックという思いもかけない災厄が降りかかり、その終息の見通しは立っていません。このことにより、社会構造は急速に変化せざるを得ないと思います。この試練の年に大学に入学する皆さん、どうか悲観も楽観もせず、皆さんの力がより良い世界へと変革するように、九州大学工学部での学問研究への努力を願います。

産業革命以来、工学による技術の進歩が、経済を、ひいては人類の発展を牽引してきました。皆さんの周りにあるものは、ほとんどが工学分野の技術の結晶です。たとえば、スマートフォンを例にとってみましょう。スマートフォンの代表とも言えるiPhoneは、構成する材料や技術の多くは日本のものが使われています。しかし、これらの基礎技術をシステム化し、斬新なアイデアで一つの製品にしたのは米国企業アップルでした。これからの工学は、単なる「ものづくり」にとどまらず、個々の技術を如何に使うかのアイデアやトータルのシステムを構築できる人財の育成が重要だと思っています。

大学では何をどのように学ぶでしょうか?
・まず、専門分野の基礎知識を身につけて下さい。最低限の基礎がないと考えることができません。
・物事の考え方・アプローチの仕方を学んで下さい。進化の早い分野ほど知識は陳腐化しますが、考え方やアプローチの仕方を学んでおけば、最先端分野に対応出来ます。
・工学部では、どの学科でも卒業論文があります。あるテーマについて、自分で調べ、自分で計画をたて、自分で実験して下さい。失敗したら、自分で考えてまたやり直すのです。このトレーニングの過程で実力がついていきます。
・アントレプレナーシップ精神をもち、他人と協力できるコミュニケーション力を身につけましょう。また、英語はツールとして必須ですので、英語によるコミュニケーション力も大切です。

九州大学の学生の約1/3は工学部です。多くの教員が皆さんを教育し相談にのってくれるでしょう。海外からの留学生も多数います。是非、積極的に留学生とも交流して下さい。工学部では、10年前から英語で学位が取れる学士課程国際コースを設置しています。応用化学・建設都市工学・機械航空工学・電気情報工学の4コースですが、この国際コースの学生さんとも活発に交流して下さい。

工学部の学生の約85%は大学院に進学します。学部の時から、自分の専門分野を深めるために大学院進学を意識しておくと良いでしょう。就職に関しては、全く問題ありません。非常に多くの求人があります。工学部出身の先輩は、公務員・企業・大学の教員など幅広い分野で活躍しています。

工学部からの大学院への進学の経路は学科により異なりますが、多くの先輩は工学府、システム情報科学府、人間環境学府、総合理工学府、統合新領域学府、システム生命科学府へと進学しています。

現在、皆さんの中で将来、博士の学位を取得したい人はどの位いるでしょうか? 大学が与える資格の中で、世界に通用する資格は博士の学位です。日本の科学技術分野の博士修了者は非常に低く、OECD加盟国の中で25番目であり、先進国ではほぼ最下位という状況です。国内総生産GDPから必要とされる博士の人数は、グローバル標準の半分しかいません。これでは、日本の将来が心配です。九州大学工学部で学ぶ皆さんには、是非、博士の学位を取得してほしいと思います。九州大学の工学系で博士を取得した人が就職に困ることはありません!

工学は世界全体を視野に入れた学問です。世界と協力・競争しなければイノベーションは起こせません。夏休みや春休みを利用した工学部学生向けの海外学生派遣・研修プログラムも実施しています。夏休みにはオーストラリア・クイーンズランド大学での6週間の英語研修(Q2PEC)、春休みにはサンノゼ州立大学での英語研修(ELEP)を企画し、多国籍の学生との交流やシリコンバレーのアントレプレナー研修を行っています。直近、このパンデミックの影響でグローバリゼーションは後退するかもしれません。世界中の国が現在門戸を閉ざしています。しかし、この感染症による混乱が終わった時、世界はこのことを教訓に更なる協調と連携を始めるでしょう。その時に向かって、皆さんは準備すべきであると思います。

大学の講義や実験・実習・演習は、皆さんがより一層勉強するためのきっかけを与えているに過ぎません。自ら考えて研究していくことを学ぶのが大学です。自分が面白いと思ったことを主体的に学んで下さい。失敗を恐れず、挑戦し続けることが重要です。皆さんのこれからの研鑽を期待します。

最後に、皆さん自身の体調管理を十分に行い、新型コロナウィルス感染リスクの少ない行動をとって下さい。自分自身が感染している可能性があるという意識をもち、こまめな手洗いと咳エチケットを心がけて下さい。また、ソーシャルディスタンスをとりましょう。

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